波佐見 有田 器まみれの一日

田舎の夜明けは半端なくきれい。
長崎への擬似帰省、2日目の朝。
今回滞在しているのは波佐見という焼きもので有名な地域。
推測100室ほどあるビジネスホテルも、これまた推定5室くらいしか稼働してない模様。
仕方ない、これがコロナ禍だ。
さて、今日のメインイベントは波佐見焼きを見に行くこと。
波佐見焼は白磁にこういう藍色の絵付けが代表的だけど、デザインも色も汎用性が高くて民芸品ではなくてプロダクト、という感じ。
波佐見地区ではどこの飲食店でも波佐見焼が使われているみたい。

「くらわん館」という波佐見焼の資料館兼ねた物産館が今日から開くってんで開店とほぼ同時に乗り込む。

あけましておめでとうございます〜とまだ清掃中の店員のおばちゃんたちと挨拶を交わす。地元の人たちと言葉を交わす時はわたしの方言バルブを目一杯開放して訛りまくる。
その方が会話があたたかい気がする。
くらわん館の2階は資料館になっていて陶磁器や波佐見焼の歴史がわかるように色んな展示がある。
これは窯の中で器が焼かれる様子。
友人は絵付師なので自宅にこれの小さい版の窯があるそう。
有田とか伊万里は海外でも重宝されているけど、こんな大きなものをこんな品のあるものに仕上げるのはそもそも芸術大作だ。
この資料館のある意味一番の見どころはこの絵付師ロボットかも。
妙に精巧なこのロボット、絵付の風景より血管浮いてる手とか細部が気になりすぎて簡単に目的を見失う。
市民の血税で作られてたら穏やかでないけど、どうやら宝くじ収益の寄贈品みたい。みなさんの3億円への夢はこんなとこで形になってましたよ。
こういうお皿も波佐見焼。
ジェラートが入ってる透かしが入った器は小さい頃に実家でもよく見たのを思い出してまた望郷。
これも波佐見焼。
こうやって生活の中でじゃぶじゃぶ使えるのが波佐見焼の良さ。
くらわん館で海外の市場と同じ熱量の買い物魂が炸裂し、友がひくくらいの爆買いで満足したので撤収。個人的には一日居れる器パラダイス。
休憩がてらに近くの棚田を観に行く。
日本の美しい棚田にも選ばれた鬼木棚田。
天気はいいけど風はめちゃくちゃ強い。
前日の冷え冷えコースが蘇る。
最近、長崎でもブランド牛に力を入れているようでいきなり牛舎がある。
いきなり棚田があったり牛舎があったり都会とは違うおどろきの連続。
お茶も名産らしく茶畑もあった。
棚田も茶畑も牛たちもきちんと管理されていて改めて自然を相手にうまく付き合っている生産者の方々には尊敬の念。

さて、長崎の波佐見の隣は佐賀の有田。
そう有田焼です。

車ですぐなので行ってみることに。
ジャジャーン!
ドゴーン!
これが有田焼のテーマパーク、有田ポーセリングパークなりー!

唐突に現れるベルサイユ宮殿みたいな建物。
佐賀にいることを全く記憶から消せばフランスに来たかのよう。

ドイツ建築らしいけども。


今は中が改装中で入れなかったけどとにかく広大な敷地にとにかくバブル風味のゴシックだかロココな空間が広がる。
噴水の陶器とか全部有田焼なんだろうがそれより和風な山に囲まれた異空間に聞きたいことがありすぎる。
本題の有田焼の登り窯は、敷地の隅に戦火を潜りましたくらいのボロボロ感で残っていた。
これよ、これ!
宮殿作ってる場合じゃなくて伝統産業でしょうがと拡声器で有田に突っ込みたい気持ちを抑えて有田焼の体験工房へ。
成形から絵付けして焼き上がるまでの工程が見学できるようになっている。
小学生が絵付けの体験を一生懸命やっていた。
描いているのがたとえ竈門炭治郎だったとしても、今日の絵筆の感覚は忘れないでいてほしいもんだ。
たくさん作るにはある程度効率化は必要。
こんなスタンプみたいなので下絵を付けて後は手描きでなぞって描いていくものもある。
焼かれ待ちの器たち。
焼いたらもっと小さくなる。
外には有田焼のテーブルセットがとても素敵に並んでいる。

波佐見や有田の焼き物は陶石から作られる。
自然界のものを人間が加工して、結果こんな風に粋な風景になるって、人の手もまだまだ捨てたもんじゃないな。

こうして有田ポーセリングパークを後にして再び波佐見へ戻る。
空港に向かう道のりでこんな夕焼け。

海や山や夕陽はずーっと変わらない秩序で呼吸していて、石や草木から原料を取り出して火や水を使って道具を作ったのは私たち人間。
地球を構成する要素としてはそれぞれが豊かさを生んでいて、バランスがよいと心地よいもんだなと波佐見や有田の暮らしに溶け込む器たちを見てしみじみ。
都心で暮らすわたしらの風景や文化はどんな形で残せていけるんだろう。
デジタルトランスフォーメーションとかばっか考えてリアルがどんどん減ってく毎日からふと、モノの質感が愛しくなった一日だった。

1.5日の密避け弾丸擬似帰省はこれでおしまい。次の旅はいつになるやら。

The Weekend Traveler

時間がなくて旅に出たいけど出られないという人たちにおくる、週末中心の旅行記。個人的な旅の備忘録なので旅行サイトとしては役立たずかも。非日常の音や匂いや光を感じたい方はどうぞ。

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