Zero Waste Action 上勝町

最近、馬鹿の一つ覚えの様にどこそこから聞こえてくるSDGsという言葉。
そんなのが出来上がるずっと前から悪戦苦闘しながら、今や世界が注目するゼロウェイストタウンとなった徳島県上勝町が今回の旅の目的地。
なんも言えねえ。


ってくらい四方を山と緑に囲まれた上勝町。
土地のほとんどが人工杉に覆われている。

今回お世話になるのホテルWHY。
WHYの意味はこの後明らかに。
チェックインを済ませて上勝町唯一のゴミ収集センター、ゼロウェイストセンターの見学スタート。
大卒ですぐにここの運営会社に入って神奈川から移住してきました、というとても穏やかに上勝町とゴミ処理の歴史について説明してくれるお姉さん。

後で部屋に戻って何の気無しにインスタ見てたらヒューレットパッカードの広告に登場してた役員の大塚さんだった。お若いのに詳しいのねーくらいに思ってしまって反省のアラフォー姉さんここにあり。
上勝町にはゴミ焼却施設がない。
従ってゴミ収集車も走っていない。

1500人くらいの町民が自分でこのゼロウェイストセンターへゴミを持ち込み分別する。その分別の数、なんと45種類!!
えー、もう修行じゃん!!

と思ったものの、ここではゴミを持ち込んで分別するとちりつもポイントなるポイントがもらえ、それは他の店でエコバッグを使ったり量り売りを利用したりしても同じポイントが与えられ、しまいには色んな生活必需品に交換できるという事で、これは先住民だろうが移住者だろうがやるっきゃない。
しかも分類がとっても分かりやすい。
更に8割はリサイクルに行くのでその時のコストも明記されていて、ゴミを出すこと=お金がかかることだとド直球に突きつけられる。
センターからそれぞれのリサイクルの地へ送られるのは月に数回。かなり多くの時間、このセンターで保管されるため、持ち込まれるゴミはこうやって各自が洗って乾かしてあって、そのおかげで全く所謂ゴミ置き場の臭いがしない。
都会の施設の処理能力に任せてまあまあ適当に仕分けていたわたし、座禅だったら完全に肩にハリセン乗った状態。早目に謝りたい。
みんなが立っているこの芝生の土地自体、1970年代から20年ばかし、野焼きと呼ばれるゴミの不法投棄と焼却が行われてきて町にとって大問題だったそう。
最初に誰かが持ち込んだゴミはどんどん膨れ上がって粗大ゴミやしまいに犬や猫も捨てられていたってんだから見たことないけど、きっとその様はこの世の墓場状態。
建物を支えるのは全てこの地域の杉の木。
できるだけゴミを出さないように角材にせず、そのままの形を利用したんだとか。
丸太のままじゃないとこが建築チームの技とセンス。
この建物の象徴的な窓は、上勝町で解体された建物から集められたものを再利用したもの。こういうのをゴミから資源に変えられる技量ってすごい通り越して頭が下がる。
もう一つの象徴的なのがこの照明。
捨てられるだけだったゴミがお金を出しても欲しいような素敵なインテリアに生まれ変わっている。
首都圏で似たり寄ったりな欧米デザインみたいなのを大量生産しているデザイナーさんたち、こういうので凡人をハッとさせてくだせい。
これは建設過程で使ったペンキの空き缶だそう。デザインの持つ意味、パワーがこんな足元にも。
受付の周りにはこんなスペース。その名も「くるくるショップ」。
住民から持ち込まれた要らないものを要る人がもらっていく。
誰かの要らないものは誰かの欲しいものかもしれない。この場所は地元の小学生の発案だとか。ゼロウェイストの英才児め、やるじゃないか。
こういう風に持ち込む人ももらっていく人も質量を記録すればお金はいらない。
ふむふむ、この台帳の件数と量をゴミ削減の一つのKPIにするんですね。
減らしたゴミの量はこうやって見える化する。517kgのゴミが廃棄を逃れて資源や誰かの元で要るものに変わっていく。

どっから来たんだっていうハニワが減量報告の使者みたいに見えてくるから不思議。

ここの運営は色んなところでこういった経営の技も効いていて勉強になる。
ゴミがいちいちかっこよくなっちゃってて、張さんだったら毎秒あっぱれ出してる気分。


さて、ゴミツアーで学びを深めたら部屋に行く前にその日使う分だけの石鹸を自分でカットしてもらう。
コーヒーもお茶も必要な分を申告すればお姉さんがガリガリその場で挽いて用意してくれる。
シンプルで機能的な石鹸切り器。
ゴミを減らすための手間は機能的な道具によって別のところで手間を省く。ここがないと21世紀少年少女たちのスピード感に合わなくなってしまうから、さすが23歳リーダー。よくお分かりで。
最大4組のみのホテルWHYの室内。
廃材とハイセンス建築デザイン集団の知恵比べ。
ぬおー!かっちょいい…
ここでリモートワークしていいなら普段の3倍働きます、と勝手に誓う。
室内にゴミ箱はなく、右下のこれまた洒落たカゴに入っている箱にゴミは仕分ける。
一泊で出たゴミたち。
空き瓶が圧倒的に多くてお恥ずかしい。
左の山盛りはマスクとかティッシュとか衛生面でリサイクルできず棄てるしかないゴミ。この割合が上勝町でも1番多くて1番コストがかかっているそう。
生ゴミはこのコンポストへ。うまく分解が進んでいて臭いも何も全くない。
ちなみに上勝町は全家庭がこういったコンポストを使っているため、ゴミステーションには生ゴミのコーナーがない。

宿泊客にはゴミステーションで施設のお兄さんと一緒に仕分け体験できる。
これは朝食。地元食材で作るハンバーガーはとっても美味。そしてゴミはこの紙袋だけ。

この他にも花王と提携して、洗剤のパックのリサイクルで子ども用のレゴを作ったり企業と連携した取り組みもいくつか。
企業も得意技を生かしてこういうアイデアを見せてくれると株価も上がるよ、CSR係のみなさん。
わたしが生まれた時代には、ゴミを燃やす炎が燻り続けていた上勝町。2003年に自治体として初めてゼロウェイスト宣言を行って20年足らずで世界がモデルケースにする循環の町になったいるけれど、1500人ばかりの人口の半分以上が65歳以上の高齢者というもう一つの現代の課題も抱えている。

あのままゴミや冷蔵庫や車や犬猫を燃やし続けてたら、間違いなくおじいおばあだらけのリアル姥捨山みたいになってたかもしれない。

今、高齢者になっているみなさんが何年も何十年も失敗もしながらゴミを消すことじゃなくて生かすことに奔走した結果、ゼロウェイストセンターができ、大塚さんみたいな有能な若者が移住して世界に情報発信してくれ、大手企業が協賛してくれ、わたしみたいな旅人が訪れたい場所になっている。
なぜ、それを買うのか。
なぜ、それを捨てるのか。
なぜ、それを作るのか。

WHYの目的は上勝町の45分別を見習ってくださいという事ではなくて、わたしたちの生活の中でその問いかけを生む事だ。

焼却設備を持たない上勝町にとって45分別は必然であり、それは横浜に住むわたしたちが4分別くらいしかしないことを否定する事ではない。

相変わらず好きなモノに囲まれる生活は幸福だけど、Whyの問いかけは自分の中に植え付けておこうと思った。
ぐうの音も出ない程の学びの旅をありがとう、上勝町とゼロウェイストセンターのみなさん。せめてプラごみ洗って捨てる市民に生まれ変わります。
SDGsなわたしの旅はつづく。

The Weekend Traveler

時間がなくて旅に出たいけど出られないという人たちにおくる、週末中心の旅行記。個人的な旅の備忘録なので旅行サイトとしては役立たずかも。非日常の音や匂いや光を感じたい方はどうぞ。

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