垂涎の盛岡さんぽ

北東北の旅、3つ目の街は盛岡。
この日も朝から雨。
東京ではもう終わってしまったであろう紫陽花が咲き誇っていてとても叙情的な雰囲気。
岩手日報の看板と柳がまた渋くて良い。
岩手はコロナ罹患者を長く出さなかった土地でもあり、今でもとても意識高く、でも煩わしくなくコロナ対策が徹底されている。
夜の街にも人は居たけど、落ち着いて楽しんでいる雰囲気でとても安心できた。
さて、ブランチに、南部鉄器を扱っているカフェへ。味ありまくりの外観。
古民家の良きデザインを活かしきって、さらにこんな素敵な庭まで。
雨と古民家と南部鉄器のカフェなんて、何もしてないけど勝手に丁寧な気分になる。
床の間もまたセンスの塊。
南部鉄器で沸かしたお湯で入れたコーヒーも白湯もとても美味しくて、さらにここのリーフレットの「15分早起きして南部鉄器で丁寧な暮らしをしてみませんか」という真正面からの丁寧案内にぐぅ…となる二人。

素晴らしい南部鉄器も解説付きで見せてもらい、簡易的ながらもお店の丁寧さに身を浸して外に出ると正面にも素敵な建物が。
幾度となく盛岡を訪れている友も初めて見たというこの建物はなんと、岩手が産んだ文豪、宮沢賢治先生と石川啄木の記念館。
その名も啄木 賢治青春館。
石川啄木と宮沢賢治という存在自体がなんだか儚くてキラキラしていて青春の刹那的な美しさみたいな感じがする。

しかし、まあ、キラキラした青春を送ってない二人としては、また次回訪れてみようと青春館はおあずけに。
数分歩くと既視感のある建物に出会う。
東京駅と同じ建築家の旧岩手銀行本店。
通称 岩手銀行赤レンガ館。
子どもの時からディズニープリンセスよりはいからさんに憧れ続けた私にとって、ときめきが詰まったこの意匠と構造。
明治の終わりに落成し、2012年に銀行としての役目を終えるまで近代日本の象徴みたいな存在だったろうな、と100年の昔に思いを馳せる。
手摺のデザインや彫りは芸術そのもの。
窓から見える景色は変わっただろうが、君はまだ素晴らしく美しいままだよ、と気持ち悪いくらいの賛辞をこの建物におくりたい。
立ち入り禁止だけど空中廊みたいな部分の手摺は木製。戦時下で鉄が使えなかったためだとか。
この日は中でとても静かなフリーマーケットが開催されていた。
盛岡の人たち、こんな素敵な空間でフリマだなんて何たる贅沢。
一番大きな総会室。
この部屋でどんな議論がされたのかとか想像するだけで楽しい。
別の階段にはまた別のデザインが。
最近の線と点、みたいな建築もすごいんだけど、こういう歴史や時代を反映した血の通った建築の、目が眩むような華やかさが大好きだ。

素晴らしすぎて終始ため息が止まらない赤レンガ館はこれでおしまい。
戦時下の空襲を生き延びた歴史的な建物が街の色んなところに存在していて、近代日本の浪漫に憧れる人びとにとっては街歩きがとても楽しい盛岡。
そして歴史的な建物も名もない古民家も大事に素敵に使い続けている盛岡の丁寧な人たち。

いつもは丁寧な暮らし、の後に草が付く私たちもこの日はその本質みたいな光景に触れつづけ、なんだか自分の精神も洗われたような気分になった。

そりゃ宮沢賢治も石川啄木も大谷くんも佐々木朗希くんも生まれるわ、岩手よ。

盛岡行脚は続く。

The Weekend Traveler

時間がなくて旅に出たいけど出られないという人たちにおくる、週末中心の旅行記。個人的な旅の備忘録なので旅行サイトとしては役立たずかも。非日常の音や匂いや光を感じたい方はどうぞ。

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